【大江戸釣客伝】

しとけん

2014年04月03日 00:53

まずは、朝日新聞デジタル2011年9月14日11時33分の記事から~

釣りが人をひきつけるのはなぜか――。自らの半世紀を超す釣り経験をもとに、夢枕獏が江戸時代の釣り指南書が生まれた背景を描いた時代小説『大江戸釣客伝』(講談社)が刊行された。人生を変える釣りの本質に迫っている。
 夢枕は毎月300枚(400字詰め換算)以上の原稿を書きながら、年間70日ほどは釣りに出る。自宅のある神奈川・小田原近くの川だけでなく、ロシアやペルーなどにまで出かける。
 「子どものころ親父(おやじ)に連れられてフナを釣って以来です。のんびり釣りをしているようでも、何で釣れないのか、どうすれば良いのか、とさまざまな思いが駆けめぐっています。マラソンを走禅と呼ぶ人がいますが、釣りは竿禅(かんぜん)、あるいは釣禅(ちょうぜん)です」
 これまでも小説『鮎師(あゆし)』やエッセー『本日釣り日和』などで釣りへの思いは表現してきた。「ぼくの小説は山岳小説であれ、格闘技小説であれ、真ん中のことを書いてしまう。なぜ山に登るのか、なぜ戦うのか、と。『神々の山嶺』で山への思いを書き尽くしたように、『大江戸釣客伝』で釣りへの作家としての責任を果たせ、気が楽になりました」
 今回の主人公・津軽采女(うねめ)という小普請組の武士は、釣り指南書「何羨録(かせんろく)」を書いた。釣り場紹介から釣り道具、エサ、天候の読み方まで書かれている。
 「世界的に有名なウォルトンの『釣魚大全』が完成した約50年後に書かれたもの。鉤(はり)の種類の多さだけを見ても、江戸に豊かな釣り文化があったことが分かります」
 津軽采女は吉良上野介の娘を妻とし、釣りも禁じた「生類憐(あわ)れみの令」を出す徳川綱吉に数年間仕えている。「討ち入りとそれに続く吉良を悪人とする風潮を間近で体験しています。22歳で妻と死別し、77歳で亡くなるまでに8人もの子や孫に先立たれるなど、不幸が続く生涯でした。釣りだけが支えになっていたのだと思います」
 芭蕉の弟子・宝井其角(きかく)や絵師・英一蝶(はなぶさ・いっちょう)との交流も描かれる。「芭蕉の生涯をかけた俳諧への傾倒も、物狂いだと思います。人は何かに狂いたがっている。それを実現してしまった人間がうらやましいのです。ぼくは釣りに入れ込んでいますがそれは二番目。一番好きなのは今も小説を書くことです」(加藤修)
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 「釣りのどこがいいの?」
 と聞かれてもなかなか一言では答えられませんね・・・
 かといって、
 「いやね、釣りっていうのは、その日その日で、釣れる場所、時間、水深、エサ、誘い方等々色々な要件があって、その要件にいかに自分の釣りをアジャストさせていくか!それは経験でもあり、予測でもあるんだけど、それがピタッとハマって狙ったとおりに魚を掛けた時の感動といったら!・・・」
 なんて説明しても、釣りを知らない人は何の事やら????っとなってしまいますね。。。
 「大江戸釣客伝」でも主人公・津軽采女(うねめ)が、義父に釣りのどこがいいのか?について問われ、その答えを自分自身に問うているシーンがあるのですが、非常に共感してしまいます。
 結局、どこがいいのっ?て聞かれても、理屈じゃないんですよねぇー。
 釣りに狂ってしまったことで、家庭を失い、ある意味めちゃくちゃな人生を歩んでいくおっさんがこの小説でのある意味キーマンになるのですが、このおっさんが、自分にとって「釣りとは何ぞや!」について語る部分があるのですが、共感というより、すごく恐怖を感じたというか、自分 ちょっとしたきっかけでこのおっさん側に行ってしまうのではないか・・・と。
 それぐらい、「釣り」は自分の中で占めている部分って大きいな。と思う時が多々あります。
 このおっさんの最期ってのがまたインパクトがあって、自分はちょっと憧れてしまうところがあるんですよね。。。
 あんまり書き出すとネタバレになるのでこのへんで終わりますが、「大江戸釣客伝」釣り好きの方にはかなりお勧めの本です!!お家でまったりアームチェアー・フィッシングをされる時に是非!

~何羨録(かせんろく) 序文~
嗚呼、釣徒の楽しみは一に釣糸の外なり。
利名は軽く一に釣艇の内なり。
生涯淡括、しずかに無心、しばしば塵世を避くる。
すなわち仁者は静を、智者は水を楽しむ。
あにその他に有らんか
(意訳)
釣り人の楽しみはやはり“釣果”に尽きるだろう。
社会的名誉は重要ではない。いま、自分の世界はこの釣り船の中が全てであり、完結している。
だが生きていくとそれだけで、どうしてもなにかと煩わしい。難しいもので。
だから自分は時々、そんなことは忘れることにしている。
つまり、仁(この場合は慈悲や憐憫)の心を持つ者は心静かに暮らし、智恵のある者は水(釣り)に楽しむのだ。
これほどの楽しみがあるだろうか。


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